すてきな体験

「どこか しばらく泊まれる所知らんかの?
ここならば一番いいんじゃがのぅ」
「うん、ここは泊まれる施設ではないでの、
調べてあげるでの。。」
この利用者さんは 隣町に住む娘さんの助けを貰いながら
健気にも一人暮らしを続けていた。
介護認定者ではない一人暮らしの高齢者は
とっさの時の受け入れ施設がないのが実情である。
以前 近所に 新しい施設を立ち上げることになって
多くの地域の人たちが そのような希望を寄せたが
それは はかない望みだった。
思案に暮れていた時に
何くれとなく足繁く 施設を訪れてくださる社協の
地域づくり担当者のTさんの顔が浮かんだ。
実情を理解した彼女の敏速な行動は
翌日には対策会議を開き、
その翌朝には地域ケア会議を設定したのだった。
「朝8時だって?
本当、信じられない!すごいわねっ!」
最も心配していたスタッフは
驚きながらも喜びで声が弾んでいた。
Tさんは休みの取れない娘さんの
勤務状況に合わせたのだった。
そして早朝には娘さん、Tさん、
包括センターのケアマネさん、
社協のヘルパーステーションのヘルパーさん、
福祉課の担当職員、ガイドヘルパーさん、
そして施設のスタッフが勢ぞろいした。
結果は 利用者さんのサポートだけでなく、
娘さんの家庭の支援や 相互互助を作るための
近隣の地域づくりにまで 及ぶこととなった。
「あ~ これで 安心して娘が帰る日を
待つことができる」と
胸をなでおろした利用者さん。
「おかげさまで
こころおきなく入院する事ができます」
偶然にも 参加者の中に
同じ病気の体験者がいたのだ。
心強いアドバイスをもらった彼女は
その翌日入院したのだった。
これからの高齢者を支えるには
一個人、一施設、一組織だけでは
不可能な事を身をもって知る事ができたし、
「しんじょうよりあい」にとっては
またとない貴重な経験をすることとなった。