夕暮れの出来事

薄暗くなりかけた頃 一人の訪問者がありました。
聞きなれない声に 玄関に出てみると なんとHさん。
八十路も後半のご婦人です。
「また 持って来たんだけど・・」
マーケットの袋に入っていたのは10冊の単行本です。
かなりの重さです。
ず~っと以前にも 「しんじょう よりあい」に
読み終えた本を沢山頂いたことがあったのです。
覚えていてくださったのですね。
「こんな年寄りになってしもうて
あんたの「しんじょう よりあい」に 何の手助けもできんが・・」
いいえ、いいえ 忘れないでいてくださったことだけで もう十分ですよ。
今は 隣町の介護保険施設のディサービスを利用されているとか。
帰途が心配で 同道しようと歩き出したのですが、
そんな迷惑は掛けられないと、そして まだまだ 大丈夫だと
押し返されてしまいました。
おぼつかない足取りのHさんを 放ってはおけずに 見
え隠れについていきますと
見覚えのある方が 目配せして引き継いでくれました。
帰宅してすぐに電話がありました。
「孫が確かに玄関まで見届けましたよ」と。